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「AIにできないこと」が、あなたの最大の武器になるーー世界が気づき始めた『ウェルネス』という生存戦略

  • Mar 21
  • 6 min read


A person standing by the water in the woods.
Photo | PDX Coordinator & Strategic Planner, LLC

AIが私たちの日常に入り込んできた!というのが、約2年前。判断を助け、次の行動を提案「してくれちゃう」便利なツール。


その変化は、私たちが想像していた以上のスピードで、静かに日常の中に溶け込んでいます。


しかし、これは脅威ではありません。私たちの強力なパートナーの誕生です。


今まさに、あなたはAIが肩を並べ、互いの強みを活かし合う時代の入り口に立っている。だからこそ問われていること、それが・・・


あなたの中にある「AIにできないこと」――。


その答えの一つが、世界規模で急速に注目を集めている「ウェルネス」です。


以前から社会的な関心を集めていたこの分野。それが、AIの登場によって重要性をさらに増しています。


今や、年平均16%超えの成長を続けているウェルネス市場。食品、小売、不動産、観光、医療、教育。業種を問わず、「自分たちのサービスや空間が、人の心身にどう作用するか」。それを問い始めた企業・組織が、着実に次の時代の扉を開いています。


これは一部の人の贅沢な話でも、健康志向の人だけの話でもありません。


食べるものをどこで誰から買うか。働く空間が自分の心身にどう作用しているか。訪問する先に何を求め、何を体感し持ち帰るか。そんな問いが今、あらゆる現場に静かに、しかし確実に浸透しています。


この西海岸で長年、変化の最前線を定点観測し続けてきた視点から、その「答え」を紐解いていきましょう。


空間がウェルネスになる時代


情報があふれるほどに、人は本質へと戻っていく。


西海岸は、かつてのような脚光の下にはありません。物価高、ダウンタウンの変化、政治的な混乱。しかしそんな中でも、今なお人々に選ばれ続けている場所があります。そしてその場所には、共通する設計思想があります。


「そこにいるだけで、人が自然と整えられる」


例えば、ある小売店。商品の陳列は最小限で、余白が多く、自然光がよく入ります。スタッフは売り込みをしません。ただ、その人のペースに寄り添います。価格は決して安くはありませんが、客足は絶えません。「ここに来ると、なぜか気持ちが落ち着く」という理由で、リピーターが根強く存在しています。買い物をしているのに、買い物をしている感じがしない。


その時間そのものが、日常を整えるひとときになっているのです。


こうした「空間がウェルネスになる」という発想は、今やアメリカだけの話ではありません。グローバル市場でも、同じ潮流が加速しています。


各地のホテルや施設でも、この「空間設計としてのウェルネス」が最大のテーマになっています。


世界のウェルネスコンセプト施設を訪れる中で、経営者たちが共通して口にする言葉があります。


「ここに来たことで、帰った後の日常が少し変わった」ーーそう感じてもらえる滞在を設計したい。


お出かけや旅の思い出だけではなく、日常への還元。そのことを真摯に設計し続ける施設に、今、世界中から人々が集まっています。


しかしこれは、小売りやホテルだけの話ではありません。オフィスの設計、商業施設の空間づくり、駅や沿線の街づくり、企業の福利厚生。


「そこにいる人が、どう感じ、どう整えられるか」という問いは今、あらゆる『場・プレイス』を手がけるすべての人に問われています。


空間は人の行動を変え。行動は習慣を変え。習慣はその人の人生を変える。情報があふれ、スピードが増すほどに、人は「静かに整えられる場所」を求めます。


そのような場をつくれる人が、心地よさからくる信頼を育んでいくと感じるのです。


A bicycle is placed in front of a wooden door bearing a "Bikes for Rent" sign.
Photo | Yayoi Yamamoto | PDX Coordinator & Strategic Planner, LLC

「整える」のは、身体だけではない


AIは、人類が過去に積み上げてきた膨大な「言葉と知識の塊」にすぎません。ですから、今この瞬間、あなたの心と身体が感じていることは、まだAIのデータの外にあります。


これからの時代に最も必要なスキル。それは「批判的思考」「創造性」「感情的知性」  (世界経済フォーラム提唱)

これらは、いずれもAIが最も不得意とするものです。なぜなら・・・


「どうして、なぜだろうと疑う力」(批判的思考)。「まだ無い何かを生む力」(創造性)。「人の気持ちを感じ取る力」(感情的知性)。これらは、正解のない体験の中でしか育たないからです。


ではその体験を、日常の中でどう積み重ねるのか。その答えは、この町の日常の中に既に息づいています。


西海岸に長く暮らしていると、整えるという感覚が特別なことではなく、日常の選択の中に静かに根付いていることに気づきます。


何を食べるか。どこを歩くか。誰と時間を過ごすか。朝、どんな空気感で目を覚ますか。その一つひとつの選択が、その人の心身の状態をつくり。やがて「あなたという器」そのものを創っていきます。


この整えるとは、身体だけの話ではありません。


食の選択は思考の質に影響し。思考の質は判断の精度に影響し。判断の精度はその人の生き方そのものに影響します。身体と思考と感覚は切り離すことのできない、ひとつの生きた体です。


「器としての自分」を日々どう扱うか。この問いに真摯に向き合い続けることが、AIと共存するこれからの時代において、人間が最も大切にすべきなのではと感じます。


従業員の心身の状態を経営課題として捉える企業。顧客に「整えられる体験」を提供することを競争力の源泉とする産業。この様に、個人の生き方の哲学がそのまま設計思想になる時代がすでに始まっています。


食を選ぶこと。自然と交わること。人と誠実に関わること。そのような「当たり前の積み重ね」が、実は最も強靭な生き方であり、最も持続する暮らし、そしてビジネスの土台になるということ。


AIにできないことーーそれは、あなたの中にすでにあるはずです。


そこに気づき磨くこと。それこそを「ウェルネス」と呼ぶのかもしれません。


The sky at dawn over the forest—bearing the words, "Good Morning, Portland."
Photo | Yayoi Yamamoto | PDX Coordinator & Strategic Planner, LLC

日米を起点に、この西海岸から見てきた景色が教えてくれたのは、派手さでも規模でもありません。そこには変化の波に揺れながらも、ぶれずに残ってきたものがあります。


自分の日々の小さな選択の積み重ねが、自分を育て、やがて誰かの、そして社会の力になっていく。


真摯に、誠実に、目の前の人と社会に向き合い続けること。


『自分が何者であるかは、何に貢献したかで決まる』


連載を掲載していたニューズウイーク日本語版のWorld Voiceは、サイトリニューアルにともない新たな形へと生まれ変わります。


さまざまな変化の最前線に立ちながら、これからも皆さまに役立つ提案と提言を、日米を舞台に発信し続けてまいります。


5年間お読みいただいた世界中の皆さまへ、心からの感謝を申し上げます。

そして、皆さんの日々が、どうか豊かで健やかでありますように。



 
 
 

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