ポートランドを象徴するキーワード。それが、『コーヒー』『地ビール』『地産地消』といった嗜好品。
先日発表された、『2023年全米コーヒーの町*』の第2位に選ばれたことからも、その人気と質の高さが伺い知れます。
* 〖 第1位:サンフランシスコ 第3位:シアトル 〗
コロナ禍の影響でおうち時間が増え、多くの人々が自宅で本格的なコーヒータイムを楽しむトレンドは、世界的にすでに定着している様子です。
カフェの人材不足や物価高騰が影響する中、自分の好みのコーヒー豆で贅沢な一杯を。自宅でアートなコーヒーを淹れることが、新しい生活の中で心地よい時間となっています。
自分のために選び、購入する。
自己ケアをする人が増え始めたことからか、少し前からよく耳にするキーワード。
それが『ポジティブ消費』です。
モノを買うことに罪悪感を持ったり、逆に不必要なモノを購入してしまったり。
そんな買い物の行為にはマイナスなイメージがつきもの。
しかし、コロナ禍から現在にかけて、自分の身体に良いものを選んで癒されるポジティブな消費が広がっています。
そんな中、このコーヒーのまちで、ウエルネスを求める人々が集うポートランド版ティーショップに今、注目が集まっているのです。
ウエルネス文化とは、各自の健康と喜びを大切にし、調和のとれた生活を目指すライフスタイル。身体と心の調和を重視し、健康で満たされた日々を楽しむことにフォーカスを置いたもの。
元々、健康的でリラックスした時間を過ごすことが好きなポートランドの人々。ティー業界においても、環境への配慮や社会的責任が重要視されています。
そのティー業界を牽引しているのが、約20年にわたりウエルネス&ティー文化に貢献しているカップル起業家です。
中小企業が約80%を占めるオレゴン州とポートランド近郊都市。コロナ禍を通して、世界中でウエルネス、マインドフルネス、健康志向に注目する人が増加。ティーを通して、自分と向き合い、澱んだ気持ちを静めます。
日本人にとって馴染み深いティー&お茶文化。ポートランドではこれがどのように変化し、市民にどれほど愛されているでしょうか。
夏の熱さがやっと終わり、ほっとするも束の間。急激な冷え込みと不安定な天候が続く今日この頃。
ポジティブ消費とウエルネスの魅力を少しだけ一緒に感じてみませんか。
この記事を読み終えた後、あなたの揺らぐ体調や心にそっと寄り添い、ほんの少しでも解放感をもたらしてくれれば嬉しいです。
|ウエルネスと調和した、心と体に響く「プレイス」の提案
「企業という一つの箱から脱出して、事業を起こしたい。それも、町の人々へポジティブな生活を提供するための製品と場所を創造したい~。」
カリフォルニアとオレゴンの田舎町でそれぞれ生まれ育った、アンジェラさんとドミニクさん。大手企業や行政関連業務での日常に悶々とした日々を送っていました。
そんな二人が、4年間のカップル生活を通じて起業の舞台に飛び込む覚悟を決めたのは、20年前のこと。『ポートランド・ティー・カンパニー(旧:ティー・チャイ・テ)』を開業し、現在では、市内に3店舗、郊外に1店舗を構え町の新たなアイコンとして注目を集めています。
でも、なぜコーヒーの町でティー・ビジネスを? そんな疑問に二人はシンプルに返答します。
「勉強や作業にカフェをよく使っていましたが、あのざわざわとした雰囲気がイマイチ合わなかった。コーヒーの香りとエネルギーは強すぎて、もっとリラックスした場所が欲しかったのです。癒される場所が欲しかった。だから無いなら作ろう!という発想だったのです。」
ポートランドと近郊都市は、食品と飲料の品質にこだわりを持っている人々が多く住む町。その価値観に合致するティーを提供するビジネスを始めることが基本の考え方。
数年間、二人は同じティー企業で経験を積みながら、独自のウエルネスという場を創り上げることを決意しました。
北米では、ティーというとちょっとお高くとまっているイメージがまだ残っています。そのため、町の小さな喫茶店のような環境で五感が癒されるような、ゆったりとした時間を楽しんでもらいたい。そんな新しい視点から、ポートランドのカフェ文化にウエルネスという新たな選択肢を提供していくことに、二人は心を砕いてビジネスを拡大。
そんな矢先、新型コロナが襲います。
「当然、私たちも迅速なビジネス変革が求められました。まずは、実店舗だけに頼らず、Eコマースに焦点を当て、新しいウェブサイトを構築し、卸売部門もスタートさせることから開始。変化は容易ではありませんでしたが、将来への着実な投資となりました。その時、素早く動いた結果、今では商品制作からBtoBまで、広範な領域に対応するシステムが整っています。」
その経験から、さらにウエルネスに、そしてより深いマインドフルネスへと思考を広げていく『ポートランド・ティー・カンパニー』。
具体的には、どんなティーをポートランドの人々は求め購入しているのでしょうか。
|心と体の癒しを味わう、セラピー型消費との共鳴
ポートランド・ティー・カンパニーのセレクションは約130種類。独自のブレンド(ストレート、煎茶、抹茶、中国茶、チャイ、ヤベ、ハーブ、ルイボスなど)は特許取得済みで、そのバリエーションは無限大。
さらに、ナイトロ・アイスティーやスパークリング・アイスティーなどのボトル商品も展開しています。
まだお茶の楽しみを知らないオレゴンの人々が、なぜリピーターになるのか。その理由がここにあります。
「北米で人気の高い日本製の抹茶と煎茶。大好きな日本文化を尊重しながら、ユニークでおいしいブレンドにも力を入れています。
例えば、ストロベリー煎茶。洋梨抹茶。さらには、色が美しいWカップリングの煎茶&オレゴン州ベリーのスパークリングティーなど。でもなんていっても、ポートランド近郊の人はティー・ラテ系が好きなようです。
オリジナルブレンドに力を入れる理由は、お茶の新しい楽しみ方を人々に知ってもらいたい。そんなシンプルな願いからなのです。」
特に注目すべきメニューのセレクションが、『オーガニック・アポセカリー』。
直訳すると、オーガニックな薬剤師!?
『サプリメント剤の代わりに、おいしく、消化も良く、心も身体もよろこぶものを取り入れて。ウエルネスな日々を。』そうメニューに書かれています。
北米でも、というよりカフェのメニューとしても聞きなれないこの表現。メニューにあえて取り入れた理由を聞くと、こう説明します。
「ポートランドでティーブランドを始めた際、今までの文化とは違う新しい雰囲気や考え方をお届けしたいと思ったのです。
オレゴンの住民は自然とオーガニックに対する興味が強く、それが自然療法やハーブ医学への好奇心につながっています。ここに住む多くの人々がこれらの知識を共有し、それが健康と美味しい味わいを大切にする理由の一部となっています。」
『オーガニック・アポセカリー』のセレクションの中でも人気があるティー。
それは、苦みとすっきりとした味わいで身体にクリーンなエネルギーをもたらす、エクアドル産のガユーサ。
抗酸化・免疫強化に効果的な穏やかな味わいとリラックス効果がある、インド産のホーリーバジル。
その他にも、店内のカウンターではその日の体調や気分に合わせたティーをお勧めすると話します。
これこそ、著者が『ポートランド流・セラピー型消費』と名付けた、ポジティブな体験を提供するエッセンスなのです。
ポートランドのティー文化が特筆される理由。
それは、ウエルネスへのこだわりを感じさせるセラピー型消費の心地よいアプローチ。心と身体、そして脳への優しい効能が調和し、優しいつながりを紡いでいるから。
マインドフルネスを感じながら、サプリの代わりに美味しくて消化の良いものを身体に取り入れること。それこそが、ポートランドらしいウエルネスの象徴と言えるのでしょう。
ポートランドのティー・ビジネスから覗く、心地よいリラックスとウエルネスへの真摯な探求心。
このまちが紡ぐ独自の文化は、新しい時代の扉を開く『キー・キーパー』(鍵の番人・鍵をにぎる人)の存在のように思えます。
ウエルネスの深い旅は、自分との対話を通してマインドフルネスな体験へと繋がります。そこから得る知識と癒しは、急速に進む現代の変容に寄り添い、新しい視点を開いていくのではないでしょうか。
もしかすると、あなた自身と向き合うための新たな一歩を踏み出すため。ちょうど良い時期かもしれませんね。
さて、心が軽くなるような、ポジティブなお買い物に出かけてみましょうか。
今年最後となる次回のテーマは~
年末特集!『2023年を振り返って~不動産からみるポートランド』です!
不動産・家賃高騰、そして物価高による生活への影響。これは日本だけの課題ではありません。不動産から見える経済、未来へのヒント?若者や生活弱者の賃貸あるある? 不動産から浮かび上がる町の息吹や生活のリアルな一端とは。
どこも報道しなかった最新のポートランドの生活事情。年末特別企画は、12月中旬掲載です。
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