
『健康寿命』という言葉を最近よく耳にします。そして、『幸福寿命』という人生において幸せを感じられる期間を表す言葉も浸透しつつあります。
健康でどれだけ長く幸せに過ごせるか。これこそが万人の願いではないでしょうか。
最新の研究で分かっていること。それは、日々の衰えに気づいた瞬間にどう過ごすかが鍵となることです。しかし、多忙な日々の中で、運動や自分のケアを後回しにしてしまう。これは、みんな同じなのかもしれません。
そんな日常のある朝、眠い目をこすりながら参加したビジネス協会の会議でのことです。一人の黒人男性を見た瞬間、驚きで目が点に! その若々しい外見と立ち振る舞い。さらに、孫の写真を見せてくれた瞬間、「えっ?おじいちゃん?」と頭がさらに混乱しました。
米国に住む黒人の平均寿命は、他人種に比べて短命。その主な原因は生活習慣病やアルコール、薬物の影響です。
さらに驚かされたのは、会話からにじみ出る誠実さ。そして、なによりも柔和で幸せそうな空気感!
元オリンピック選手としての経験を持ち、現在70歳を目前に控えたナイームさん。お話を聞いているうちに、最新データ情報を基にした生き方・暮らし方が見えてきました。
緑とオーガニック食材にあふれるオレゴン州とポートランド。そこから見えてくるウエルビーイングとは? そのヒントを具体的に深掘りしていきます。

| スポーツの祭典への道のり ~ 創造力が切り拓く新たな展望
ポートランドで生まれ育ったナイームさん。友達とかけっこをしたり、公園でキャッチボールをするのが大好きな子供でした。そしてもう一つ大好きなこと。それは、叔父さんの家に飾られている数々のスポーツトロフィーを眺めることです。
これに触発され、ナイーム少年はいつか自分のトロフィーを手に入れたい!という夢を抱くようになっていきました。
その手始めとして8歳でリトルリーグに参加。スキルと集中力を高めていきます。その後はさまざまなスポーツを経験し、高校ではフットボール部に入部。苦しくも楽しい日々を過ごしていました。
そんなある日、父の友人が言った「テコンドーという韓国の武道を知っているか?」という一言が、人生を大きく変えるとは誰も予想しませんでした。ナイームさんは武道に興味を持ち、すぐに近所の道場に。瞬く間に魅了され、その場で入門を決意します。
「道場での練習は想像以上に厳しくてね。ついていくために、トレーニングプランを自分で考えて行っていました。
そんな我流トレーニングに限界を感じていたある日、アスリート向けの『ピークパフォーマンス』という本に奇跡的に出会ったのです!」
ちなみに、『エネルギーマネジメント』は、アスリート向け書籍をビジネス向けに改定した米国のベストセラー。職場や生活で成果を上げ続けるためのエネルギー管理方法と、成長痛を楽しみながら人生を充実させる方法が紹介されています。
「早速、その内容に従ってメンタルトレーニング、さらに毎日の練習を詳細に記録することを開始しました。このノートに書き留める『自分を振り返る』という行為が、スポーツでの成功だけでなく、その後の人生の基盤となっていったのは驚きでした。」
大学でもテコンドーに打ち込み、地域大会で次々に賞を獲得。
「1979年、初めて全米選手権に出場して銅メダルをもらった時は、本当にうれしかった!その時を機に、さらなる挑戦への意欲が高まったのを覚えています。」その後、全米大会で次々に金メダルを獲得し、米国テコンドー界での地位を確立していくナイームさん。
そしてついに、ソウルオリンピック(1988年)のアメリカ代表に!念願のオリンピック出場チケットを手に入れた、歓喜の瞬間でした。
「オリンピックでは順調に勝ち進み。でも準決勝で、地元韓国選手との激闘の末に最後の場面で惜しくも敗れ。とはいえ、世界最高峰の舞台で戦えたことに、胸が震えるほどの誇りを全身で感じた自分がいました。」
競技終了後、ナイームさんは世界中の選手たちとの交流から多くの学びがあったと振り返ります。
「異文化交流を通じて、新たな視点で世界と自分自身を見ることができるようになりました。トレーニングの違い、食文化、思考の違いなど、すべてが新鮮で刺激的だったのです。スポーツを通じて得た自己成長の貴重な機会は、私にとって本当の意味での人生の祭典でした。」
オリンピックを終えたナイームさん。メンターという分野を切り広げながら、さらなる情熱に突き動かされていきます。それは、幼いころから撮り続けてきた写真への想いです。
スポーツで培った集中力、忍耐力、創造力をもとに、カメラマンとしての道を歩み始め、新たな世界をレンズを通して写し出してきました。
現在、プロのカメラマンとして十分な収入を得て、米国内や世界中を駆け回る日々です。
こうした生活から学んだのは、仕事、環境、日常の意識、食事、運動のコンビネーションが健康寿命と幸福寿命を延ばすことだと説きます。
では、その秘訣とはいったい何なのでしょうか?

健康であることが精神の安定や生きがいをもたらすことは、今や常識です。
デジタルデトックスやマインドフルネスという最新の健康法は、心身のバランスを整えストレスを軽減することで、その重要性がますます認識されています。
意外に思われるかもしれませんが、健康寿命と幸福寿命の概念は、高齢者だけでなく若年層にも重要です。
20代や30代から健康と幸福に対する意識を高めることが、未来の豊かな人生の基盤を築く鍵といわれます。
その理想的なバランスを体現しているのが、ナイームさんの現在のライフスタイルです。日々の積み重ねを大切にし、一般的なフィットネスに情熱を注いでいます。そしてなんと、2024年には5Kレース(65-69歳の年齢層)で見事に3位に入賞しました。
そんな70歳目前の彼が、どのように日常生活の中で健康を意識し、人生を豊かにしているでしょうか。
その秘訣を3つのポイントから探っていきましょう。

| 1.「自分らしくいよう!他の人はすでに他人なのだから。」― 心身のバランス
写真家として、人々の心に響く一枚を追求するために集中力を研ぎ澄ませています。とはいえ、仕事への評価は常に背後にあります。そのため、ストレスを軽減し心身の健康を維持するために、独自のルーティーンを欠かさず実践しています。
● 自分に害を及ぼす人や環境を『意識して』できるかぎり避ける:常に、精神的・感情的な健康を保つことを重視します。
● 読書習慣:インスピレーションや心を豊かにする書籍を選択。(チャレンジ・克服のストーリー、聖書など)
● 環境音楽(アンビエント)を聴く:脳のマッサージを目的に、心拍数を落ち着かせ集中力を高めます。
【 3分でできる ~ 心をリラックスさせる方法 ~ 】
深呼吸をしながら目を閉じ、自然の音や環境音楽を聴く。職場やトイレの中でも、すばやく実践できるシンプルな方法です。
ストレスがピークに達しそう!と感じたら、即座に行動してみてください。定期的に実践することで、脳と身体をリフレッシュし、切り替えがスムーズになっていくはずです。
| 2.「身体も脳も思考も、食べたもので作られる。」― 食事・食材選び
コンセプトは、「未病」「身近で手に入るホールフーズ、つまり加工されていない自然な食材」「鮮度が高い」「手間をかけずに、シンプルに素材の味を楽しむ」。もちろん、予算的にも高級素材を選ぶことはしません。
● 有機栽培や無農薬の野菜
● 地鶏や天然の魚類
● ナッツ
● 季節の果物
● 赤ワインをすこしだけ
【 3分でできる ~ 朝食の定番 ~ 】
『バナナとアボカドにゴマと蜂蜜』をかけたシンプルな一皿。バナナは優秀なエネルギー源、ゴマは抗酸化物質とミネラルが豊富。アボカドはオメガ3とビタミンを含み、蜂蜜は免疫力向上や抗菌作用、エネルギー補給に役立ちます。さらに、脳にも良い影響を与え、集中力と記憶力をサポートし、神経機能を改善します。また、ランチ時まで腹持ちが良く、心身の活動を支えます。
| 3.「一貫性がカギ」― 日々のエクササイズ
持続は力なり。毎日のフィットネスを維持するために、時間を意識的に確保しています。定期的な運動は脳の活性化に役立ち、心身の健康を保つ不可欠な要素です。
● 早朝のランニング:約30分
● ジムでの筋トレ:週に3回
● 階段上り下りやランニング:約20分
● 定期的なウォーキング
【3分でできる ~ フィットネス ~ 】
「駅やオフィスでの階段の上り下り。さらに、週に何回か徒歩移動を意識して始めてみましょう。そして続ける。続けるためにはどうすればよいのか考え実行するのがポイントです。1か月目には違いが表れるはずです。

|毎日一振りのワクワクを ~ くらしに輝きを添えて
最後に、ナイームさんの人生に大切なものとは何ですか。そうお聞きすると、こう締めくくってくれました。
「人生に大切な基本のき。それは、誠実さ、やさしさ、礼儀正しさ。この価値観は、私の人間関係の基盤を築き、公私を含めた周りの人々との信頼関係を深める人生の礎となっています。
さらに、自身の心に栄養を与え続けることも欠かしません。日々ワクワクできるエッセンスを生活に取り入れています。
私の場合、世界中を旅しながら写真を撮ることが、自身の心身を高めるための重要な手段だと自己分析しています。
ですから、その夢を現実にするために具体的な計画を立て、ひらめいたアイデアはすぐにメモします。そして、その計画を実現するために、経済面も含めて必要な行動を日々着実に進めていくのです。
自分自身にインスピレーションを与えること。それによって内面が豊かになり、日々の生活に新たな視点をもたらすことを確信しています。」
意図を持って生きる。柔軟性を持つ。毒素から身を守る術を生み出す。後悔なく生きていくための小さなワクワクを持ち続ける。
そんなキーワードと共に、大きく手を振ってくれたナイームさん。その姿はまるで、人生の美しい瞬間を写し出すレンズのように輝いていました。

多くの方々に出会い、インタビューを行い、各方面で記事を寄稿してきた著者。その中で、人望があり社会的に成功している方々が口をそろえて言う言葉があります。
それは『誠実さ』。
とはいえ、誠実さという性質と習慣は、簡単に一日で作り上げられるものではありません。
人を見下したり、あざけたり、相手の立場に立って考えない対応やメール。
そのような行為で一時的に得られる優越感や利益は、決して本物の徳にはならない。そんな教えが、改めて深く胸に刻まれました。
『誠実という宝箱を胸に抱いているあなた。今日、どんな選択をして明日の自分を作り上げたいですか?』
次回は、日本でも注目を集める概念、最新版『サステナビリティ』を紹介します!ポートランド在住の有名建築コンサルタント(兼 ヒスパニック商工会議所会長)に特別取材! サステナブルな社会、建築、環境とは? 新しいリビングコンセプトを盛りだくさんに紹介します。掲載は7月下旬、お楽しみに!
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