2024年8月中旬、ついにポートランド国際空港(以下、PDX)の新ターミナルがオープン!
その前夜祭となるオープニングパーティーにご招待を受け、ターミナルに足を踏み入れた瞬間....「うわっ!空気がおいしい!」
それもそのはず、米国空港としては異例の9エーカー(約3万6千㎡)という木造デザインの屋根。そこには、持続可能な方法で調達された地元産の木材がふんだんに使われています。
さらに、ポートランドの町に立在するおしゃれなポートランドブランド店舗の数々。そのデザインにも心がときめきます。
PDX新ターミナルのキーワードは、『サステナビリティ―と地域愛の融合』。
持続可能な成長、地域愛・地元文化の統合、地域経済(中小企業)への貢献、エコ。そしてDEI(多様性・公平性・包摂性)です。
今回は、著者の長年の友人であるロビンホールド港湾長に、特別インタビューを敢行。他のメディアでは語られない秘話に迫るスペシャル版をお届けします。
一般メディアでは取り上げていなかった、耐震対策や日本への直行便の可能性。 さらには巨大空港を牽引するために欠かせない、『リーダーとしての3つの要』も深堀り。
さあ、新しく生まれ変わったPDX空港の全貌を、一緒に覗いてみましょう!
| 進化するPDX:未来への挑戦と持続可能な発展
長期的な拡張計画が進行中のPDX。今回オープンした新ターミナルは、その第1期工事にあたります。
ターミナルをさらに使いやすくするため、全体の動線、チェックインカウンター、出迎えエリア、セキュリティエリア、標識やインフォメーション、レストラン・ショップなどが改良中。2026年初頭の完成です。
このPDX巨大プロジェクトに込められた思いを力強く語る、ロビンホールド港湾長。
でもその前に・・・すでにメディアで報じられた内容をざっくりとご紹介します。
〖 建築・地域の未来を築く中小企業支援 〗
建築・拡張工事では、中小企業にビジネス機会を提供し、雇用創出を促進。地域経済の活性化にも重点を置き、特にこれまで取り残されてきた中小企業に新たなビジネスチャンスを提供し、それを基盤としてビジネスを成長させる機会を作り出しました。
〖 エコとデザイン:地域に根ざした持続可能性 〗
地域の環境と経済に最大限の配慮をしています。オレゴン州のネイティブ・アメリカン部族と長期に渡り話し合いと勉強会を持ち、公平な取引で供給された木材を使用しています。先住民地域で先祖代々守り育てられた木々は、旅行者に伝統と文化を伝える役割を果たします。
さらに、自然光を多く取り入れる屋根のデザインにより、建物全体のエネルギー消費が50%削減され、人工照明の使用も従来より50%少なく抑えました。
〖 DEI:多様性が創る新しい地域価値 〗
障害を持つ旅行者のための取り組みが評価され、連邦航空局の『市民権アクセシビリティ・パートナー賞』を受賞。これは、すべての人が社会に平等に参加、公共施設や交通機関での差別を禁止し、障害を持つ人々が平等な権利を享受できることを目指す賞です。
また、車椅子利用者のために木製の通路を採用し、全ジェンダー対応トイレや視認性の高い新しい標識を導入することで、公平に誰もが利用しやすい環境を整えています。
さらに、新しいショップやレストランはすべて地元ブランドで、そのうち60%が女性やマイノリティーのオーナーによって運営されています。
この様に、PDX全体でDEI(多様性、公平性、包摂性)を全力で推進・支援しています。
〖 地元文化の統合:空港を超えた新しい「プレイス」 〗
単なる空港の枠を超え、ポートランドの精神を反映するデザインや地元アーティストの作品をいたる所に設置。地域文化のハブとしての役割を担うことに心を砕いています。
詳しくは、こちら(英語版)をご覧ください。
さて、ここからは本誌だけに語ってくれた『新たなPDXの背景とビジョン』。力強さと温かさを兼ね備えたロビンホールド港湾長が、未来への展望を次々と鮮やかに表現してくれました。
| 強さ、安全、快適性
【 耐震性 】
空港は安全が第一優先。当然ですが、新しいターミナルはマグニチュード9.0の地震に耐えられるように設計されています。
ターミナル内の「Y字型柱」には、屋根と建物の構造が独立して動くことができるよう、最新アイソレーター(免震装置)が設置されています。地震時には、屋根だけでなく外壁も最大24インチ(約61センチ)まで動く仕組みに作られています。
【 セキュリティ 】
新しいターミナルのTSAセキュリティチェックポイントは、より広く。最新の設備を備えた検査レーンで、スムーズで効率的な検査を可能にしたデザイン。
最新の自動手荷物検査レーン(ASL)を導入し、3名が同時に手荷物を置けるステンレス製の個別ステーションを設置。ベルトコンベアによってトレイが自動的に回ってくるので、手でトレイを置く必要はありません。
【 レイアウト 】
第2期工事が進行中のため、現在の仮設動線には若干の不便があります。しかし、2026年初めの工事完了後には、快適な出口レーンの設置やエスカレーター・エレベーターの増設、ゲートまでの移動距離の短縮、プライベートトイレの導入、さらに癒しの場となる待合スペースの増設が予定されます。
訪れる人々の疲れをいやし、空港を超えた体験をもたらす、米国トップクラスの『プレイス』を提供します。
| 東京直行便再開への挑戦と取り組み
では、PDXの国際ハブとしての将来展望はどうなのでしょうか。
オレゴン州の最大の貿易相手国である日本。東京への直行便の運休は、パンデミック前に中断されたままで、日本関連の企業や住民には大きな不便が続いています。
この重要な問いに対して、ロビンホールド港湾長は心を込めてこう語り始めます。
「東京直行便の運休は、私たちにとっても非常に残念な出来事です。ですので、その運休が決まった瞬間から、再開に向けて全力での取り組みを行っています。
PDXの専任チームは、需要の動向を常に分析し再開に向けた戦略を積極的に実行。
また、国際貿易や経済開発チームも地域間の強い絆を守るため、誠心誠意をもって努力を続けています。この場をお借りして、私たちの真摯な取り組みをご理解いただければ幸いです。」とじっくりと答える港湾長。
ではさらに、信頼関係があるからこそ、あえて踏み込んだ質問を投げかけてみました。
「ここまでの巨大組織を率いるために必要な、あなた流のリーダーシップ哲学。その最も重要な要素を3つだけ教えてください。」
すると、じっくりと考えた後、心の奥底の情熱と共に言葉が溢れ出します。
| 今、だからこそ必須な『3つのリーダーシップ』の真髄とは?
1.好奇心『キャリアを駆り立てる原動力』
成功するキャリアの原動力は、強い好奇心です。それは、世界を学び、探求し、理解しようとする意欲です。この好奇心が、新たな挑戦への扉を開き、未知の環境に飛び込む勇気を与えてくれます。
私もまた、異文化や市場を学びたいという願望に突き動かされ、大学院卒業後にグローバルな視野を広げ、貴重な洞察を得ることができました。それは、今でも飽きることなく続く情熱の源です。
2.集中力『成果を生む規律の力』
重要なことに集中し、優先順位をつけ、気が散るのを乗り越える能力は不可欠です。好奇心が私たちの旅を駆り立てる原動力であるなら、規律は意義ある成果へと導くコンパスとなります。
規律があれば、明確な目標を設定し、その計画を正確に実行することができる。重要な項目を洗い出し、そこに集中すること。そして、リソース(情報・資源)を効果的に配分し、最優先のニーズに応じて行動すること。この考え方を、元州知事の首席補佐官時代に実践し、徹底的に学びました。
3.地域社会への貢献『リーダーシップの底力』
人々に奉仕し、地域に貢献することは、リーダーとしての重要な責務です。市民や地域の声に耳を傾け、持続可能性やDEI(多様性、公平性、包摂性)の向上に取り組むことに深い意義を感じています。
また、地域社会にとって『価値ある資産』であり続けるために必要なことは何か。それを常に考えることが、自分の経験から重要であると実感しています。
| AI導入と人々の共生
最後に、現代の空港運営に欠かせないAIの役割についてお聞きしました。
PDXがAIや先進技術を導入する中で、どのように人々とバランスを取っていくのでしょうか。また、現在から近い将来にかけて、テクノロジーと地域の価値観をどのように調和させていくのでしょうか。
「最新の技術革新を取り入れながら、すべての人にとって安全で親しみやすい空間であることを最優先しています。ですから、AIや最先端技術は利用者の選択肢の一つという位置づけです。
その最先端技術とサービスを望む旅行者には、公平性を保ちながら簡単に使える形で提供します。しかし一方で、利用を望まない方には、明確な代替手段を用意して選択の自由を尊重します。
PDXは、この考えを乗り入れ航空会社やビジネスパートナー企業と共有し、共通の価値観に基づいたテクノロジーの利用方法を提案し続けていきます。」
そうにっこりと微笑む背後には、まるで旅客機の翼のように広がる雄大なビジョンが映し広がって見えました。
次回のテーマは、『移民が見る米国、新大統領によって向かうその方向とは?』(日本への長期プロジェクト出張のため、11月末に掲載予定。)
激しい選挙戦を経て、新しい大統領が選出される11月。
新しいリーダーの就任によって、物価高にはどのような変化が?さらに、日本人を含む外国人・移民政策はどのように変わるのでしょうか。
ポートランド在住の起業家やZ世代の視点から、深く掘り下げていきます。
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