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子どもだけじゃない! 社会人こそ必須『思考力×多様な視点』 ~ ポートランド発 4つのヒント


A large group of children are sitting in front of the building.
Photo | Catlin Gabel School, Oregon USA

就任からわずか1か月半。相次ぐ大統領令に加え、発言の一つひとつが世界中の人々を驚かせています。


その大統領令の一つが、『極端かつ無駄な政府のDEIプログラムと優遇措置の廃止』です。


実は、このDEI(多様性、公平性、包摂性)活動の廃止は、将来を担う子どもたちの教育現場にも大きな影響を及ぼしています。


そこで、今回はあえて、米国の教育方針に左右されない独自の教育を実践する『独立系進学私立校』にフォーカス。教育現場のダイバーシティー担当者に独自のDEIの取り組みについて特別取材を敢行。


近年、日米の有識者が口をそろえて言う「グローバル感覚を育て、企業を成長させるには、基本教育の変革こそがカギ!」


変化の激しい今だからこそ、子どもから大人まで今すぐ実践できる『思考を広げる必須のヒント』。


これからの時代に求められるものとは何か? どう変えればいいのか?


その答えを探ります。


Catlin Gabel School has a vast university-like campus
Photo | Catlin Gabel School, Oregon USA

|独立系進学私立校・キャトリン・ゲーブル・スクールの取り組み


日本の教育の基本となっているのが、「学習指導要領」。


国公私立を問わず小学校から高校まで、この指導要領に基づいて授業が計画・実施されているのは、ご存じのことと思います。


では米国はどうでしょうか。


実は、州ごとに教育のルールが決められていることから、全国共通の決まりというものがないのです。


さらに米国には、Independent School(独立系私立校)と呼ばれる、日本にはないスタイルの私立校が約1500校あります。


政府の教育方針に縛られず、独自のカリキュラムで運営されている独立系私立校のひとつ。それが、ポートランドにあるキャトリン・ゲーブル・スクール(以下、キャトリン校)です。


ダウンタウンから車で約10分。大学のような広大なキャンパスを持ち、生徒一人ひとりに最適化された学習環境を提供することでも知られています。


幼稚園から高校までの一貫校でありながら、エスカレーター式の進級制度をとらず。それでもなお、オレゴン州トップの進学校として「自主性を重んじる教育」を実践する同校。小規模なクラス編成を活かし、一人ひとりが各教科に深く取り組める環境を整えているのも特徴です。


「生徒たちは、教師のサポートを受けながら、自分に合った学習方法を模索していきます。同時に、クラスメイトと知識を共有しながら、自ら考え、探求する力を有機的に育める環境が整えられています。


例えば、初等教育では、教師との対話を通じて自分の意見を言葉にする練習。くわえて、安心して発言できる環境であるクラス内で考えを発表し、仲間の多様な意見に有機的に触れながら学びを深めていきます。


こうした初等教育時期での取り組みが、単なる知識の習得を超え、他者への尊重や協力の精神の育成につながっていくのです。


さらに、中・高校生になると、学校運営や地域社会でリーダーとして活躍する機会が増え、主体的に関わる場が設けられていきます。


日常のカリキュラムに実践的な活動を組み込むことで、多様な思考や問題解決能力が自然と培われていきます。


このように、生徒が実践的な経験を通じてリーダーシップや協調性を養い、自己表現や問題解決能力を自然と身につけられるようなプログラムを提供していると言います。


Several teenagers are having a discussion in a classroom
Photo | Catlin Gabel School, Oregon USA

|『 テストの点より、学びの質 』 ~ キャトリン校が大切にする教育


「教育機関の役割は、知識を教え伝えるだけでなく、社会の変化に対応できる『クリティカル・シンキング(物事を多角的に捉え、論理的に判断する力)』を育むことにあります。


生徒たちが自らの信念を持ち、それをどのように表現し、行動へとつなげていくか。その部分をしっかりとサポートすることが大切です。さらに・・・」


A group of kids running with rainbow flags
Photo | Catlin Gabel School, Oregon USA

「ただ知識を伝えるだけでなく、生徒が自分の考えや感じたことを表現し、それを周りと分かち合うことで、未来への一歩を踏み出す大切な『ヒント』が得られる環境が整えられています。


同校では、暗記やテストの点数を最優先していません。その代わりに、「体験型学習」と「総合的育成教育(Whole Child Approach)」を重視し、生徒の主体性を育むことに力を注いでいるのが特徴です。」公平性・包括性部門の代表であるコニーさんは、驚きのヒントをさらに語り続けます。


一見、逆説的に思えるかもしれませんが、キャトリン校の生徒は長年にわたり、全米規模の学力試験で常に優れた成果を上げています。」


ちなみに、卒業生はハーバードやスタンフォードをはじめ、世界のトップ大学へと進学しているそうです。


では、その秘訣とは一体何なのでしょうか?


|『 問い続ける力が未来をつくる 』~ 創造的思考を育む教育


「深い学びの鍵。それは、生徒自身が問いを立てることにあります。


『この問題・テーマにおいて、気になる最大のポイントは何なのか?』『それはなぜ大切なのか?』


このように考えることで、思考と学びは更に深まっていくからです。


教師は興味を深める道筋を示し。同時に、生徒は必要な知識を学びながら、プロジェクトを通じて応用できるように進んで行く。すると、学びが単なる情報のインプットではなく、生徒の中にしっかりと根付いていくことになります。


さらに、課題に向き合い、異なる視点によって、答えを探す力も養われます。また、最後までやり遂げる粘り強さも身につきます。


くわえて、グループプロジェクトでは、多様なスキルを持つ仲間と協力する経験を積みながら、より深く広い学びを深めていくことにも繋がるのです。」


現代に必要な柔軟な思考力を育てる鍵。それは、『テストのための学習だけではなく、人生のための学習』。


そこで、子どもから大人まで今すぐ実践できる 『思考力x多様な視点』のヒントを特別にアドバイスしていただきました。


Several teenagers are standing at a booth
Photo | Catlin Gabel School, Oregon USA

| 大人も子どもも ~ 今日から実践できる『思考力×多様な視点』4つのヒント


① 対話を重視し、他者の考えを理解する力を養う


ディスカッションは、相手を打ち負かすということが目的ではありません。また、自分の意見を一方的に伝える場でもありません。


ディスカッションとは、異なる考えに触れ、それをどう受け止めるか。それこそが、本当の学びにつながるのです。


例えば、意見が対立したとき。「この人はなぜそう考えるのだろう?」と、一歩引いて考えてみる。相手の立場や背景を想像しながら耳を傾ける。それだけで、議論の質は大きく変わります。


対話とは、勝ち負けを決めるものではなく、新しい視点を手に入れる機会です。そうした姿勢が、思考をより豊かにし、より深い理解へとつながっていくはずです。


②「正解」を求めるのではなく、多様な答えを考え、議論する場を増やす


今の時代、正しい答えは一つではありません。答えは、人の数ほどあるのです。


ですから、現在の社会問題について議論をしながら、異なる視点を取り入れる機会を意識的に持ってみることをお勧めします。


例えば、ディスカッションや会議の場で、立場の異なる意見に心をニュートラルにして耳を傾ける。ケーススタディやロールプレイを活用し、多角的に物事を考える習慣をつける。こうした経験が、柔軟な思考力を養うことにつながります。


③ 学びを実践の場へとつなげる


プロジェクト型学習やフィールドワークを取り入れ、知識を応用しながら、あなた自身による新たな発見をする。


例えば、社会課題をテーマにしたプロジェクトを立ち上げ、フィールドワークを通じて多様な視点から解決策を考えてみるのも一つの方法です。


実際に行動することで、机上の知識がより深く定着し、新たな視点が生まれるはずです。


④「自分で選ぶ」「決断する」ことを考え、経験を増やす


日々の選択を意識して、自分の考えで決める機会を増やすことが大切です。


小さなことから決断を積み重ねることで、主体性や自己効力感が育まれます。少しずつ、自分の判断に自信を持ち、行動に移す力が自然と身についていくのではないでしょうか。


Teenagers walking through campus
Photo | Catlin Gabel School, Oregon USA

日々の小さな積み重ねこそが、広い視野を育み、世界とつながる基盤になります。


そして、そのつながりは、思っているよりもずっと近くにあるのかもしれません。


日米をはじめ、世界中で教育者が置かれた環境は厳しさを増しています。

その負担は、コミュニティの健全な意識の変化と支えによって、社会そのものが変わっていくことへの希望につながるはずです。


未来をつくるのは、学校だけではないはずです。

私たち一人ひとりの日々の選択こそが、これからの社会を形づくっていくと感じます。



次回は、『アップサイクル × 社会事業』 一度しか着ないウェディングドレスを手直し再販し、その収益を生活困窮女性の社会復帰支援に充てる取り組みを紹介します。困窮家庭で育つ若年女性たちが手に職をつける機会を作り出し、自立への道を支援。オレゴンから始まり、今ではアリゾナへと拡大しているNPOの活動を、日系メディア初のインタビューで深掘りします。2025年4月初旬に掲載です。


記:各回にご登場いただいた方や記載団体に関するお問い合わせは、直接山本迄ご連絡頂ければ幸いです。本記事掲載にあたってのゲストとの合意上、直接のご連絡はお控えください。





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