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AI x デザインビルド - 米・オレゴン州 建築『新・持続的なビジネス成功への鍵』

architect and client shaking hands
Photo | iStock

建築、まちづくりで名をはせてきたポートランド。


あれから、ほぼ10年以上が経過した今。


10年ひと昔という言葉の通り、建築業界も(そして行政も)急激な変化を遂げています。


そんな中、建築業界でここ数年よく耳にすることば。


それが『デザインビルド』。


コロナ禍からの建築資材や人件費の高騰。そのような影響もあってか、建物を作る際、『設計と建設を同時に行う』という方法が、米国の建築業界で急速に普及しています。


このデザインビルド方式を使う利点は、なんといってもプロジェクトの効率化です。スピーディーに進む点が、時代にマッチしているといいます。


今後のアメリカの建築プロジェクトの半分以上をこのデザイン方式が担う、と言われている最新方式。


そして今、デザインビルドの発展の元になっている『全米デザインビルド協会(DBIA)』に大きな注目が集まっています。


ともすれば、ハードでドライな米国の建築業界。そんな中で、効率化されたプロジェクトからこそ生まれる『人との繋がり』。さらには、生成AIの適用による発展が期待されています。


今回は、成長し続けるノースウエスト支部(オレゴン州とワシントン州)の委員から、新しいビジネスの発展とヒントを深堀していきます。


さらに、ここから見える、他種ビジネスへの適応方法も読み解いてみてください。

Architect and construction worker are talking
Photo | iStock

| 注目を集める「デザインビルド」方式?


建設プロジェクトのやり方の一つのデザインビルド。設計と建設を同時に管理できる画期的な方法です。


通常の方法では、建築プロジェクトにおいて、設計者と建設者は別々の契約を結びます。これが原因で、責任争いや問題が頻繁に発生しがち。個人主義が強く、自分のために働くという概念が強いアメリカ人。


しかし、デザインビルドでは、設計者と建設者が協力し、予算やスケジュールに共同で責任を持ちます。これにより、チームワークが強調され、プロジェクト全体が共通の目標に向かって協力することが可能になるのです。


デザイン・ビルド・プロジェクトの普及を推進する団体。それが、米国デザインビルド協会(DBIA)。建築家、エンジニア、建設業者のグループによって1993年に設立されました。


そのDBIAノースウエスト支部の委員のひとり。バージニア工科大学で機械工学を学んだジェンさん。


長きにわたり、建築ディレクターとしての経歴を積み重ね、注目を浴びる存在となっています。


では、デザインビルドがグローバルな建築業界で働く人々にとって、どのような利点があるのでしょうか。そう尋ねると、ジェンさんはにっこりとしながら答えます。


「デザインビルドのプロジェクトでは、個人の力だけではなく、チームワークが不可欠です。


問題や課題が生じた際には、全員が協力し、共に解決策を見つけ出していきます。予算超過などの難題に立ち向かう時にも、その責任は一人だけにのしかかるのではなく、チーム全体で協力してコスト削減策を模索します。


共通の目標に向かってチームとして進む文化を築く。個人の力だけでなく、チーム全体の連携がプロジェクトの鍵になるのです。」


個人の力強いリーダーシップが、ビジネス界で高く評価されてきた先進国の風潮。日本でも、このようなスタイルが良しとされる傾向が見え隠れします。


米国建築業界の新たなビジネスの潮流において、私たち日本人が重要視すべきポイント。それは、伝統的なアプローチを再考し、同時に新しいアイディアに対して敏感に心と脳を向けていくことなのかもしれません。


Jen participating in a meeting
Photo | Jen Eckert

| 時代にマッチした、望まれるリーダーとは?


ジェンさんの勤務先、マッキンストリーは、15州に25の地域拠点を持つ大手建設とエネルギーサービス企業です。脱炭素ビルの提供に専念し、持続可能な未来を築くために施設とエネルギー資産の進化を牽引しています。


また、男性が多い建築業界で、多様なバックグラウンドを持つ人々をサポートする取り組みを強化している企業としても有名です。


多様性を推進するため、さまざまなメンター・プログラムを企画し、小規模企業の成長と建設業界での成功をサポートしています。同時に、この多様性を広める一環として、業界において最良とする方法(ベストプラクティス)を建築業界に積極的に発信しています。


積極的に多様性への変化に取り組むきっかけになった出来事。そして、そこから得た大きな学びから今の自分がある。そう話し始めるジェンさん。


「以前の職場は議論が活発な企業でした。プレゼン会議の場では、常に唯一の女性である私は、自分の意見を述べることにためらいを感じ。重苦しい気分で、会議に参加をしていた自分がいました。


そんな仕事場の環境下、とある大規模なプレゼン後の議論が行われたのです。そこで、私は勇気を振り絞って、他の人とは異なる視点からの意見を論理的に発言したのです。


その瞬間、部屋にいた男性たちは、私に冷ややかな視線を向ける中。ただ唯一、当時の事業部のトップがこう言いました。


『異なる視点をこの場で提供してくれて、本当にありがとう。


リーダーとして、プロジェクトをけん引していくためには、自分の意見が常にチームメンバーと一致している必要はない。


さらには、一致しなければいけないとプレッシャーを感じる必要もない。


優れたリーダーは、異なる経験、視点、意見を持つ多様な人々に意図的に囲まれるべきなんだ。


その会議で、私の提案が採用されたわけではありませんでした。でも、それよりも大切なこと。


それは、私は見てもらい、話を聞いてもらい、尊敬され、評価されていると感じながら、その会議室を後にしたことです。


そして、その時はっきり『これが私が目指すリーダー像』と確信したのです。」


素晴らしいリーダーとの出会い。その中で、その時々にふさわしい内容で、自己の強みと情熱を明確にしながら成長を続けてきたと話します。


「40時間以上の労働時間は、ただ仕事を片づけるためだけのものではない。そう私は信じています。


時間を有効に使い、楽しみながら充実感を得ることが大切です。自分にとってワクワクする要素や、やる気を引き出す要素を自分で見つけていくこと。


同時に、疲れさせる要素も見極めて排除していくことも大切です。


さらに、自己成長だけでなく、企業や社会に価値を提供できる機会を見つけること。ここにも目を向けてみてください。


このような小さな変化が、社会全体にゆるやかに影響を与えていく。このことを忘れずに、じっくりと前進していってほしいです。」


women participating in DBIA meeting
Photo | DBIA

|DBIAノースウエスト支部、ユニークな進化の舞台


建築業界の激戦区で、通常なら競争相手とされる企業や団体。しかし、異例の協力とベストプラクティスの共有を推進するのが、デザインビルド協会の真骨頂。


その中でも、米国内で特に注目を集めるオレゴン・ワシントン州支部。米国パシフィック・ノースウエストと呼ばれる個々の文化が、これからの建築と社会のカギを握っている。そう解き明かすジェンさん。


実は、アメリカという国。実際には、州や地域ごとに大きく異なる文化やライフスタイルが根付いています。それは、日本国内の文化の差と比べ物にならないほど。


「私の住んでいるノースウエストと呼ばれる地域。ここは、アメリカの中でも思考や生活、仕事のスタイルが独特で。他の米国地域とは、だいぶ異なっています。


その一つが、人やその人の意見を尊重する姿勢が古くから大切にされている点です。


現代の米国の都市部では、忘れ去られつつあるこの価値観。でも、この地域にはしっかりと根付いています。


加えて、各自が持つ信念を実行することを良しとする。このような文化と精神が強く根付いている点も素敵なところです。」


ノースウエスト地域は、テクノロジー企業のハブ拠点としても知られ、常に進化と革新に対する情熱が息づいています。


そのため、建設業界においてデザインビルドなどのアプローチが、持続的で多彩な進化と革新を推進する手段として高く評価されている。


このようにまとめてくれたジェンさん。


時代と共に成長してきた、その内面と姿に心がときめきます。


DBIA conference
Photo | PDX Coordinator, LLC

| 生成AIを絡めて新しい流れにのせていく~乗り遅れないためには


驚異的な速度でテクノロジーが進化する、現代社会と私たちの日常。


当然のことながら、建築とデザイン分野においても、急速に広まる生成AIが日常的に活用されています。


複数の要因から、大企業での生成AIの導入は当然の成り行きです。


しかしながら、経済において重要な役割を担い、多種多様な分野で雇用機会を提供し経済成長に貢献している米国の中小企業。特に、オレゴン州とポートランド近郊は、約80%を占めるほどの地域です。


* 米国では、『マイクロ企業: 従業員数が1~9人まで』『小規模企業: 従業員数が10~49人まで』『中規模企業 : 従業員数が50~249人まで』が一般的な指針として使われています。


そこで、DBIAのメンバーでもあり、中小規模の建築デザイン会社の経営者兼エンジニアから話を伺いました。


この経営者は、毎年開催されるシリコンバレーでの世界最大規模・AIカンファレンスに参加し続けています。そこで彼が得た見識は、建設プロジェクトにおいても、すでに生成AIが欠かせない役割を果たしているということ。


では、ご自身の企業では、具体的にどのように生成AIを活用しているのか。その事例を教えていただきました。


「AIアプリケーションの活用により、デザインビルドに関する専門知識を収集し、同時にカスタムChatGPTアプリケーションのベータ版テストも進行中です。


最新データにピッタリ合わせる形で、『プライベートChatGPT』の制作も検討中で、公式サイトから独自にアクセス可能にする予定です。


これにより、詳細な仕様書や複雑な建築基準をプライベートChatGPTに統合し、建築デザイナーが過去のデータに基づいて、瞬時に信頼性の高い情報を入手できるようになるでしょう。


さらに、この取り組みによって、空港建築、医療建築、下水処理デザインなど。幅広い建築分野でのパフォーマンス向上が実現します。


また、すでに高度なAIアルゴリズムの一部は、機械設計、電気工学、配管設計などの複雑な作業をサポートしています。」


生成AIを導入する際の要点は、データ品質、専門知識、適切なツール選択、プライバシー、クライアントの期待管理、透明性の確保。これらは当然の要素です。


生成AIを後押しする形で、汎用人工知能(AGI)の開発も、私たちの想像を超える速さで進化し続けています。シリコンバレーでは、AGIを中心にしたスタートアップ企業が日々生まれている状況です。


しかし、AIの急速な進化に伴っていないのがルール作りや規制。また、コンピューターの膨大な処理をどうするのか。課題は山積しています。


この点をおさながらも、現代のビジネス競争に取り残されないため、そしてビジネスの繁栄を維持するため。意欲的かつ洞察に富んだアプローチによる新たなテクノロジーの導入が、今後の鍵になるのではないでしょうか。


絶えず予算や人材確保などの課題に立ち向かっている日米の中小企業。


生成AIテクノロジーを安全かつ積極的に採用し共存することで、『持続的なビジネス成功への道』が広がっていく。


このアプローチは、現代の急速に進化し続けるビジネス環境において、ますます注目を浴びています。


A businessman and a construction worker are shaking hands on a mountain with a view of the city
Photo | iStock

新しいビジネスモデルへの移行は容易ではありません。でも、今の多様性と柔軟性が求められる時代に、新しいアプローチに挑むことは大切です。


わくわくする素晴らしいチームが、新たな環境と社会を築いていく。


そんな進化が、コロナ後に必要な日々の生活をどのように支えていくのか。あなたはどう考えますか?


次回は、ポートランドの「お茶」事情!を深堀り。コーヒーのまちとしても有名なまち。そんなポートランドで、新たに注目を集めているのがお茶。「ウエルネス」「メディテーション」「マインドフルネス」影響? コーヒーとは違う嗜好を求めて、お茶を買い求める姿をよく目にします。米国でブームになった抹茶以外の注目のお茶って?起業家カップルのインタビューから見える、ポートランド流『セラーピー型消費』とは? 10月下旬掲載です!


記:各回にご登場いただいた方や記載団体に関するお問い合わせは、直接山本迄ご連絡頂ければ幸いです。本記事掲載にあたってのゲストとの合意上、直接のご連絡はお控えください。





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