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対日貿易会議って、どんなことしてるの?オレゴン州知事 in Japan 特別密着レポート!

Trade conference held at the US Embassy in Japan
在日米国大使館内にて執り行われた貿易会議。米大使館の多部署から、実に多くの職員が参加してくれた。「ウイズコロナの期間の対州会議としては、一番長い会合となった。このことからも、オレゴン州が日本との貿易に時間と力と誠意を注いでいることを感じる。」と大使館参加職員からのコメント。 Photo | Governor’s Office, State of Oregon

コロナ禍3年目の2022年の12月。少しずつ、貿易や国際交流が戻りつつある。そんな様子が感じられます。


とはいえ、まだまだ引き続きそうな世界的な低インフレ。なかなか抜け出せない要因が、いくつも複雑に絡み合っている様子です。


グローバル化による世界貿易事情とがんじがらめの網。大離職、コロナ禍による雇用形態の変化。


日本では、技術革新とイノベーションの頭打ち。過去からの生産性の伸びの停滞。Japan as No.1 という80年代型の思考からの脱却の必要性など。どれも、まさしくといった理由が見え隠れしています。


感染さえ収束すれば、経済は戻る。インフレは一過性。そう思っていた人も多かったのではないでしょうか。でも、経済はコロナ以前には戻ってもいないし、インフレは高い水準のまま。


そこに、世界的な物価高の影響が覆いかぶさってきました。賃金の上昇ペースが物価の上昇に追いつかない。この状況は死活問題です。


そしてこの円安。この秋の劇的な変動に比べると、少しだけ落ち着いた感があるかもしれません。それでも、怖くてドル換算から目を背ける。そんな人も多く見受けられます。


円安ドル高の影響も含めて、この冬の旅行一番人気スポットは、何十年ぶりかにハワイを抜いて韓国だとか。


旅行業界だけではなく貿易でも、アメリカとの間に立ちはだかる見えない壁。


だから、このような環境だからこそ、渡航の門が開かれた訪日を決定した。そう、オレゴン州知事は話します。アジアの国々との経済発展の機会を再び促進させる、という強い目的のためです。


そして今回の訪問団は、コロナ禍ということを考慮して例年よりも少ない人数。このような状況下で、今回も筆者(山本)は、州経済局諮問委員として多くのプロジェクトを担当し、その任務を遂行しました。


そんな私が度々聞かれた質問。それは、「貿易会議って、誰と会うの? どんなことをするの?」という素朴な疑問。


今回の訪日の正式名称は、Governor's Trade Mission Trip to Japan「州知事による対外貿易訪日」です。州知事室の公式発表によるとその目的の柱は3つ。 ①「貿易」②「オレゴン州への日系企業のビジネス・企業誘致」③「観光」の促進。それとは別枠で、とても大切とされる「友好交流」も。


とはいえ、具体的に何をしているのか普通は知らないよね。ということで、今回は、州知事は日本でどんなことをしていたの?


普段はあまり語られない裏舞台を特別レポートします!


※ 今回の記事と写真は、オレゴン州知事室からの助言を元に構成・掲載をしています。文字数の関係から、訪問先名や工程内容の全てを掲載できないことを心苦しく感じております。


Photo | Governor's Office, State of Oregon
Photo | Oreine Palmer

|  ① 貿易 - 全米内で最も貿易に依存している州! どの分野で?


「オレゴン州は、パンデミック時に輸出がプラス成長した6州のうちのひとつ。


今回の訪日は、コロナ禍で休止している貿易・ビジネス、観光の分野で日本との信頼関係を再開・強化することです。


日本との強い貿易関係を重視する。結果、オレゴン州はコロナ禍を含めた過去数年間、全米で5番目に輸出の伸び率が高い州となっています。」


任期満了前の最後の訪日とあって、気合が入っているブラウン知事はこう続けます。


「オレゴン州は、全米内で最も貿易に依存している州の一つ。ですから、常に貿易を強化し続けるということは、州の発展にとって必須な課題項目。


感謝なことに、日本はオレゴン州にとって第6位の輸出市場です。2021年の州の対日輸出額は、総額16億ドルにもおよんでいます。」


ではどの様な分野が、輸出入の機会拡大の重点なのでしょうか。


「特に『半導体』『コンピュータとエレクトロニクス』『機械機器』。さらに、『農産物・食品』『アウトギア、アパレル素材関連』にも力を入れています。」ということで、昔のオレゴン関連輸出入分野からの変化も見え隠れ。


「ビジネスや貿易の基本は、信頼を基にした交流から始まる。」と繰り返す州知事。最後の公的訪日とあって、一つでも多くの会議を行う計画が練られました。


〚このような理由から、例年に増しての分刻みのスケジュール。同時に、すきま時間にはオレゴンのメディアに対する報告ビデオ会議をこなす。「そのエネルギーはどこから来るの?」と聞くと、「テへへッ」とちょっとカワイイ返事の州知事。〛


そんな中、今回も欠かすことはできない訪問先。それは農産物関連・ワイン輸入業者です。


オレゴン産ピノ・ノアールを輸入している業者・代理店数社と一緒に、神楽坂の路地裏にあるワインバーでの会談がもたれました。


「パフォーマンスじゃなくって、小さなビジネス経営者である私たちの声に耳を傾けてくれて嬉しい。」という声が聞こえます。この円安と物価上昇で、他国や他州のワインよりお手頃価格のオレゴンワインが人気上昇中とのこと。


うれしいコメントを聞きながらの帰り道、昔ながらの商店街の店に気軽に立ち寄って、「(日本語で)こんにちは~」と気軽に声をかけます。


アメリカでいう所の「mamas and papas store」、家族経営の小さな商店。日本の中小企業が日本の経済を下支えしていること。そしてそのビジネス形態と文化がコロナでさらに崩れていっているのは、日本もオレゴンも同じという悲しさ。商店街のパン屋さんで、自身で買ったペストリー。互いの味を確かめ合いながら、そんな思いをはせました。


Governor Brown walking with a pastry
Photo | PDX COORDINATOR

では、同時にオレゴンにとって大切な『半導体』『コンピュータとエレクトロニクス』『機械機器』分野はどうでしょうか。


そこをもう少し広げてみると、州への日系企業のビジネス・企業誘致へとつながっていきます。


| ② オレゴン州への日系企業のビジネス・企業誘致 ― あなた達抜きにして、オレゴン州は立ち行きません。


実は、オレゴン州最大の外国直接投資(企業誘致を含む)の国の一つが日本! 州内には、約160社の日系企業が進出。これは、州のサイズを考えると驚異的な数字です。


州の雇用の拡大とグローバル化促進から、半導体関連の海外企業の誘致と増加成長の継続に力を注いでいます。


そんな日米貿易会議が執り行われた場所は、もちろんアメリカ大使館。


事前リサーチから、州内誘致・設備投資に興味を持つ10の日系半導体企業と協会。その代表者とともに懇談会議が執り行われました。


〚米大使館入館は、国際空港より大変。最近の諸々の事件の影響か、全ての電子機器持ち込み一切NGに。正門で全員の携帯・タブレット・電子型腕時計・カメラ等々を一つの袋に集めてガードに預けて...あたふた。さらには、本館会議室入室までのセキュリティー数は倍増になっていました。〛


それと前後する形で、アメリカ大使館各部署担当者と対貿易会議も行われたり。また、ブラウン州知事のみ、着任したばかりで多忙なラーム・エマニュエル駐日米国大使(元シカゴ知事)とも個別会談も。


州知事から後から聞いた話によると、個別対談では対貿易だけではなく、これからの人材育成の話にも広がったとか。新駐日大使は、学生がキャリアに対応できるような教育を作ること。そして、生徒がグローバル経済で競争できる機会を確保すること。この両方の重要性を説いていたとのこと。


それを聞いて、なるほどと思いました。というのは、東京で行われた州主催のレセプションパーティーで、駐日大使とお話しをする機会があった筆者。その際、コロナ禍におけるグローバル経済の行く先、そして雇用・人材育成の変化について互いに意気投合。エアー握手をして別れたからです。


通り一辺倒ではない、これからの新しい時代のグローバル化って?


そんなことをさらに考えながら、州知事と向かったのは、9月にポートランド郊外にナノテクノロジー・イノベーション・センターを拡張開設した日立ハイテク本社。インテルの半導体研究開発の一翼を担う最先端システムの内容の素晴らしさに、驚きを隠せない州知事。


また別日には、ヤマト運輸の幹部と新ロジェスティックについて会談。州の貿易や駐在員には欠かせない貴重な企業から、グローバルな人材確保の実例を見聞きする良い機会となりました。


州の雇用にも大きな貢献を果たしている上記2社。『州にとって日系企業は、無くてはならない存在です。本当にありがとう。』長年の州内での働きに対して、感情のこもった言葉が幾度となく発せられます。


ビジネスや貿易の基本は信頼と誠実さ。言葉だけではない対応に、真のグローバルな関係という意味が心に響き続きました。


Governor Brown and Staff
Photo | Governor's Office, State of Oregon


Night view of Tokyo
Photo | © 2022 PDX COORDINATOR

| ③ 観光 ― 春よ来い、早く来い。直行便の行方・・・


それにしても、タフというか健脚の州知事。どこに行くにもスニーカーを履いて、駅から裏道まで歩き通しの日々が続きます。


〚「大丈夫~?」と、息を上げている周りに余裕で声をかける州知事。今年の秋は暖かかった。コートを着込んだ筆者は、汗だくでヨロヨロと。年上の知事に助けられることしばしばの東京百景でした。〛


路地を入った目的地。オレゴン産のクラフトビールを販売する店で、観光局のメディア会見がおこなわれました。


「2019年に、オレゴン州を訪れた外国人の2位が日本人です。ゼロコロナ政策を継続する1位の中国が動いていない今、日本こそが最重要市場だと考えています。」


同時にメディアからの出された共通の質問。それが、今運休している羽田/ポートランド線(デルタ航空)の再開の行方です。


「コロナ禍、そして日本の市場活性化が課題です。とはいえ、来春の運航再開を切に願って交渉を続けています。」


直行便の運休は、観光客への影響だけではなく、ビジネス、貿易、アカデミック分野へのダメージも著しいのです。著者の帰路、羽田のデルタ航空カウンター職員からも熱いコールが直接ありました。来春の再開を心待ちにしているのは、多種多様な人々の共通の願いです。


Governor Brown standing in front of the express
Photo | PDX COORDNATOR

| そして、友好・交流 ― 新しい時代へのステップ


東京での最終会議を終えて、新幹線に乗り向かった先は州の姉妹県の富山。友好提携30周年記念交流会や県庁でのメディア会見と同じぐらい重要視している事は、もちろん企業訪問です。


州農産物を数多く輸入加工している北星物産。鋳物メーカーの能作。高精度加工のキタムラ機械、スギノマシンなど。クラフト、加工に対する高い技術に質問が飛び交います。


鋳物を作り続ける女性職人の背中を見ながら、こう語り掛ける州知事。「すごいわね...。黙々と作り上げていく姿。こうして技術が若い人たちの力によって継承されていくのは、感動的に美しいことよね。」


多くの歓迎を受けながら迎えた、訪日最終会議。両県州代表の女性が、『これからの時代に見合った働きや女性の活躍』について語る時です。


州経済局女性リーダー会の発案発起人ということで、今会議も企画からMCまで一貫して担当。


今回、提案をしたテーマは、『女性が組織で活躍してくため。新しいステージにステップアップするため。そして、自分の成長を次の世代に惜しみなく分け与えるためには。』です。


住む地域や文化・環境は違うけれども、お互い学び合いながら前に進んでいこう、というエール。そして、『次の時代への新しいバトン』を若い世代に渡していくことの礎作りや実例など。


「未来に向かって、今、新しい種をまく。まき続ける。そんな州側参加者の思いが伝わったことを願っている。」州知事と一緒に、新幹線のホームでこう語り合いました。


conference room full of people
Photo | Governor's Office, State of Oregon

Next Oregon Governor Tina Kotek
次期オレゴン州知事ティナ・コーテックさん Photo |Courtesy Tina Kotek(@TinaKotek)

日本でのハードな8日間のスケジュールを終えて、一路ポートランドに帰国した知事。

ひょんなきっかけで、副知事から州知事に任命され。来年の1月で約7年間の任期を終えます。

州知事に対して、様々な評価があるのは事実です。とはいえ、過去の州知事があまり手を付けなかったマイノリティー関連(私たちの様な有色人種に対して)の取り組みとその功績には目を見張るものがあります。


時代の流れだけではなく、白人男性主義が主流だったオレゴン州を徐々に変化させていったのは、まぎれもない事実ですから。


訪日中、州知事に「これから、どうするの?」と聞くと、ほほ笑みながらこう返してくれました。「まずは、公邸から住み慣れた我が家に戻ってダウンサイズ。そこから、これからの私とパートナーとの生活に見合った暮しを徐々に見つけていく感じかな。


でもその前に大事な仕事があるのよ。それは、州知事として行ってきた良いことがらを次期州知事に伝承していく。社会に還元する形で、次の世代に引き続いていってもらうことが必要だから。


話合いの場をしっかりと設けて、貿易や経済の優先事項についても内容を渡していくつもり。


そのバトンを受け取った次期州知事が、今のオレゴン州を更に上のステージへと導いてくれる。そう信じているから。」

Yayoi Yamamoto standing next to Governor Brown
現州知事は、マイノリティーの地位向上のため、新たな取り組みとして州知事アジアリーダーを選出。公邸晩餐会で、3年連続選出者として思い出の一枚。Photo | © 2022 PDX COORDINATOR

その次期州知事が、ティナ・コーテックさん(民主党)。                                                        2023年1月から、新州知事として活動開始です。オレゴン史上最も長く州議長を務めたという経歴。そして、ゲイを公表した米国歴代二人目の州知事となります。


新しいバトンを受け取る次期州知事。人々と文化のために、これからどのような走りをしていくのでしょうか。


【次号の特別インタビュ―をお楽しみに!】



著者が東京に滞在している間、とある著名なエッセイストと話をする機会に恵まれました。


時の経つのも忘れて話が弾み。年齢も近い私たちは、『これから何をしたいのか。どのような働きをしていきたいのか。』自然とそんな話の流れになりました。


多くのことを共有しながら、いくつも共感し合えたことがありました。その中で、強く印象に残っているのは、『周りや次の世代にバトンを渡していく作業の大切さ』


自分が築き上げてきた経験、そこから得た多くの知恵。それらをついつい、自分の内ポケットにしまったままにしがちかも。自分が得たものとして完結してしまうのは、もったいない気がします。


あなたもきっと、そんなバトンをもっているはず。大きさなんかは関係ありません。


そんなあなたが思う『渡したいバトン』って何ですか。それをどうやって、さりげなく手渡していきたいですか。


次回は、独占インタビュー「 次期オレゴン州知事 ティナ・コーテックさん、教えて!です。


共和党候補と最後まで接戦を繰り返し、ついに勝利を手に入れたコーテック次期州知事。ブラウン州知事からバトンを受け取って、どう進んで行こうと考えているのでしょうか。多様性・マイノリティー目線? 継続する深刻なポートランドのホームレス問題への取り組み? 対日本貿易・友好は?そしてもちろん、読者の皆さんへのコメントも! 月21日掲載です!


さて、感謝なことに当連載も3年目に突入です。これからもポートランドを中心に。そしてポートランド近郊市にも広げて、魅力的で懸命に生きている人のインタビュー記事を掲載していきます。


さらに、新しい州知事の時代、そして新たな年を迎えるにあたり、連載タイトルも今月から「最新ポートランド• オレゴン通信 ー 現地が語るSDGsと多様性」にリニューアル!


長所も欠点も含めた、ありのままのポートランド・オレゴン。そこでの生き方考え方。あなたの暮らしや仕事に照らし合わせてみて、何かのヒントになれば幸いです。


吠えることが多かった寅年ももうすぐ終わりですね。来る卯年には、もっと自由に飛び跳ねることが出来る年となりますように。


2023年も引き続き、ご愛読のほどをお願い申し上げます。


記:記事に関するお問い合わせは、山本まで直接ご連絡頂ければ幸いです。行政との合意上、州政府・知事室への直接のご連絡はお控えください。









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