ビジネスの視点から見るローカルとグローバル
掲載日:2026年8月
NHKも注目。
早朝7時半に150人が殺到する熱気―
政財界リーダー1000人を動かす
オレゴンビジネス協会OAMEの真髄

州財務 • 経済政策統括官 Tim Knopp 氏
「オオアミ」――。まるで日本語のように聞こえる単語に、地元の大きな漁網か何かを想像してしまうかもしれません。 実はこれ、アメリカのオレゴン州における最大級のビジネス協会の名前。正式名称はOregon Association of Minority Entrepreneurs。
日本国内では、NHKや日経のTV番組が何度も訪問撮影を行ってきました。しかし、在オレゴンの日系ビジネスパーソンにはあまり知られていないという現実があります。
そんなOAME、先日、第38回展示会&ランチオンが開催されました。
会場に足を踏み入れて目にしたのは、参加者約3,000名という圧倒的な熱気。正午からのランチオンには、なんと1,000名もの政財界リーダーが一堂に会し、会場全体から地響きのようなエネルギーを感じます。
各テーブルには――連邦政府局、州政府行政機関、上下院議員、州の主要企業――という、地元オレゴンやバンクーバー地域の第一線で活躍する経営者たちの顔、顔、顔。PDX Coordinator & Strategic Planner社のVIPテーブルには、等々力総領事、メキシコ総領事、連邦政府職員、州下院議員、そして日本人商工会の面々も同席。まさに、オレゴンの動脈がここに集結しているといっても過言ではありません。
本年度のメインスピーカーは、Tim Knopp州財務・経済政策統括官。州内のインフラ投資による持続可能な発展のロードマップを具体的に提示。各企業が、成長エンジンとして果たすべき役割と将来を分析しながら、政府との協働を熱く願い語る姿が強烈な印象を残しました。 正直、行政のトップがこれほど深くコミットするイベントは、全米を見渡しても極めて稀なことです。
その理由として、OAMEは地元の利権や法制度の壁をこじ開け、私たちマイノリティビジネスが事業を合法的に前進していく仕組みを作り出した立役者そのものだからです。
その仕組みがどのようにして作られたのか、歴史の針を少し戻してみましょう。
利権ビジネスの壁を切り崩した、歴史的ターニングポイント
現在でこそ、多様性が当たり前になったオレゴン。しかし、OAMEの歩みは現実との闘いから始まりました。
1970年代、当時のオレゴンのビジネス業界は、圧倒的な白人中心社会という厚い壁が立ちはだかっていました。マイノリティの企業や起業家は、どれだけ高い技術や熱意を持っていても、公共事業や主要な民間案件への参入機会すら得られなかった。要するに「信用を得るに足らない存在」、それが当時の立ち位置でした。
この不条理な壁を打ち破ったのが、OAME創設者のブルックス氏でした。彼は日系人のビル・ナイトウ氏(Naito Parkwayで知られる実業家)をビジネスの師と仰ぎ学びます。
ブルックス氏が働きかけたのは、市場原理のなかで正当に仕事を得ること。差別を感情的に訴えず、行政を巻き込んで公平な入札条例の策定に尽力します。「法的なビジネスの平等性」の立役者として立ち回り、1987年の会の設立と共に、邁進していきます。
交渉の末に勝ち取った参入権の枠組みと確かな実績。ここから、現在のオレゴンで、かつてマイノリティと排斥された私たちのビジネスが、安全かつ対等に営まれるようになったのです。いわば、多様なビジネス環境の「インフラ」を創り上げたのがOAMEなのです。
現在では州内のほぼ全部の政府機関と大手企業を網羅する、会員数約1,500組織へと成長。マイノリティビジネス協会として、全米トップ5に入るまでとなりました。
驚くべきことに、これだけの規模でありながら、事務局長以外のスタッフはすべてボランティアで成り立っています。自分のコミュニティをより良いビジネス環境にしたいという純粋な当事者意識。これこそが、この会の唯一無二の強みとなっています。

左から在ポートランド領事事務所総領事 等々力研氏、
PDX コーディネーター&ストラテジックプランナー 代表 山本彌生氏、 在ポートランドメキシコ総領事 カルロス・メレンデス氏
経済の「今」が即座にわかる、「切磋琢磨」のビジネス流儀
OAMEの実利性は、月2回の「ネットワーク定例会」に顕著に表れています。なんと早朝7時30分にスタート、9時ジャストに終了!という、徹底したビジネス優先のタイムマネジメントです。
そしてこの定例会は、よくある名刺交換交流会とはまるで種類が違います。ビジネスの今を学び、最新の情報に触れる目的で、一年を通して毎回150名超の参加者が早朝から押し寄せます。
ゲストスピーカーは、州知事、上下院議員、市長、ビジネスメンターなど、その時世にぴったり合ったキーパーソンが登壇。ここに身を置くだけで、今オレゴンで何が起こっているのかが、肌感覚で即座に理解できる紐づけです。
さらに、いつも感動するのは、その場を包む「温かい」「優しい」空気感。会場にはもちろん同業者もいます。しかし、そこにあるのは足を引っ張り合う関係ではありません。お互いの成長を高め合う「切磋琢磨」という名の、成熟した大人の集まりなのです。
"Stay ready to be ready"(いつでも動けるように、常に準備を怠るな)
AIの急速な普及、行政の矛先、国際入札の変化など、今の米国市場は目まぐるしく変化しています。だからこそ、常にチャンスを見逃さずに捉える、本場のアメリカ流ビジネスを学べるOAMEは貴重な存在です。
さらに、“Everybody’s In, Nobody’s Out(全員が仲間、誰一人として排除しない)”というモットーを掲げる。ここには人種、ジェンダー、言語の壁などは存在しません。ネットワーク定例会への参加は自由です。
この生きた仕組みと熱量を、ご自身の事業にどう活かすか。激変する米国ビジネスの最前線で、チャンスを掴むためのドアを開けるのは、他ならぬあなた自身かもしれません。
日本語でのお問い合わせはOAME国際部委員長まで。 yayoi@pdxcoordinator.com
本稿は、山本彌生が有料会員向け経済情報サイトおよびオレゴン州の日系新聞に寄稿した記事をもとに、当サイト掲載用に再構成したものです。